俳句
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1 春の日や点滴ぽとりと時きざむ
点滴や一滴一滴春の音
(2019・3)
1 孫が来てすみれを摘んで帰りけり
日々同じ変わらぬままの老いの春
(19・4・7)
1 梅雨
猫眠るひげの先なる梅雨の空
梅雨深し猫が添い寝の夜の寒さ
水無月は雨降りやまぬ水の月
水無月は水のあふるる田のかげり
(19・6・10)
1 白内障手術
2019年、この年5月に
左眼、8月に右眼を手術、
世の中がかくも透明とは?
白内障片目なれども夏さやか
眼の手術されど変わらぬ女房かな
白内障眼帯はずして夏の空
颶風迫るものみな伏して静かなる
(19・8・18)
機影過ぎ音の追いゆく秋の空
(19・9・13)
夏の夜の終電なぜか急ぎおり
夏燦爛入道雲の動きだす
機影すぎて雲の生まれる秋の空
秋風や死神単衣で立ち尽くす
仏心血をすう蚊なれど眺めおり
(19・9・17)
一ミリの虫慕いよる夜更けかな
(19・9・20)
長月や今年は蝉の声聞かず
人生を脱皮そこねて秋となる
秋風や昼寝は雲の上なりき
秋風や絹雲天使のわすれ衣
秋風や今日も命をつなぎおり
秋風やわが懐を探りゆく
秋風や手術はぶじに白内障
(19・10・5)
1 赤信号秋風もふと吹きやみぬ
青信号心得顔の犬が先
(19・10・11)
1 大氷河こくりと崩れ静かなり
(19・10・20)
1 秋風もふと信号で足を止め
(19・11・5)
1 人生もかくあらんかな日向猫
わが猫に敬意おぼゆる秋日向
(19・11・18)
1 駄句駄句と駄句の流れゆく秋の空
秋の空めくれどめくれど秋の空
風邪気味や俳句ぼーと秋の空
(19・11・27)
1 一条の雲動かざる師走かな
(19・12・28)
1 初春の空にわが身を洗いおり
新春やこの身米寿を迎えけり
玲瓏たる冬の青空われは雲
澄み渡る冬空年賀書き遅れ
(19・12・31)
1 2020年の新春を迎える
初春や一条の雲動かざる
初春の空に我が身を洗いおり
米寿われ初春の空の青に染む
めでたさや新春われは米寿なり
玲瓏と冬の青空身をさらす
米寿われ空の青さに身をさらす
米寿われ初春の雲の心地なり
新玉や一条の雲動かざる
新玉や米寿のわれの筆遅し
(2020・1・1)
1 初春や猫一声のご挨拶
新春の青空に手を洗いおり
玲瓏と輝く冬空身をさらす
(2020・1・3)
1 三月の夕空飛びゆく竹とんぼ
人気なき街やコロナが歩みおり
猫眠るわれも昼寝や春うらら
三月の空の青さや窓の猫
猫眠る耳の先なる春の空
猫眠る耳青空をさしており
猫眠る耳春空の音ききつ
(2020・3・24)
1 春や春のんびりすぎて駄句ばかり
春や春妻は半日美容院
耳鳴りや春の渚の波のよう
春うららパソコンコロナにやられしか
春うららウイルス窓より覗きおり
(20・4・7)
1 梅雨晴れ間つばくら藍を一線す
梅雨晴れ間二羽のツバメの丸き円
真向かいの家は無人の夏となり
(20・7・2)
1 ひまわりと太陽カクと向かいおり
(20・8・20)
1 秋空の藍突き抜けるぬ烏かな
藍深く音なき空のうごかざる
黒一点藍に染まらぬ烏かな
秋の空烏は西に急ぎ行く
(20・10・26)
1 秋空の藍突き抜けてゆく烏
(20・11・5)
1 向家に人住まずして春めぐる
向家は長き不在やまたも春
われを見つめ猫不審顔春日差し
(21・2・23)
1 春空を斜めにいそぐ烏かな
(21・3・8)
一点の雲なき春の空無音
(21・3・12)
歯が抜けて春風そよと通りゆく
(21・3・21)
1 白熊が氷河のうえで吠えており
青梅は焼酎に抱かれ眠りおり
(21・10・11)